計算コラム

(92) 比較優位

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2018/ 8/3
 世界の国々はなぜ貿易を行うのだろうか? イギリスの経済学者リカードは1817年に比較優位という概念を提唱した。 自由貿易において比較優位にある財を輸出すると共に、比較劣位にある財を輸入すれば、絶対優位に関係なく貿易で利益を享受できるという考えである。今日の国際分業の理論の中心概念となっている。

 2ケ国で考えてみる。前提条件としてA国、B国は、ぶどう酒を1単位を作るのに労働力をそれぞれ80人、120人、毛織物を1単位を作るのに労働力は90人、100人と仮定する。(図1) この場合A国はぶどう酒も手織物もB国より生産効率がよいので「絶対優位」にあるという。

 では相対的に見るとどうだろうか?
A国はぶどう酒と毛織物の比率が80人:90人=1.125
B国はぶどう酒と毛織物の比率が120人:100人=0.83・・
ぶどう酒はA国が、毛織物はB国が比較優位だということがわかる。ではA国、B国が得意分野に特化したらとどうなるだろうか?得意分野に特化することで、ぶどう酒、毛織物とも総生産量が増加していることがわかる。赤の部分(図2)

 比較優位の原理は、しばしばアインシュタインと秘書の関係で説明される。 アインシュタインは物理をやってもタイピングをやっても秘書よりも優秀かもしれないが、 1人で全部やるより、タイピングは秘書にまかせて、自身は物理に専念した方が効率が良くなるという話である。

1単位作るのに必要な労働量
特化前(図1)

特化後(図2)
A国B国総生産量
ぶどう酒80人120人2単位
毛織物90人100人2単位
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A国B国総生産量
ぶどう酒170人0人2.125単位
毛織物0人220人2.2単位

 貿易は双方にとって有益であり、19世紀以降、貿易が活発に行われるようになった。 しかし1929年の世界大恐慌で、自国の産業を守るために輸入を制限したり高い関税をかけたりしたため、かえって不況が深刻化する事態に陥った。その反省から自由貿易を促進する様々な取り組みが行われてきたという経緯がある。 最近の保護主義の復活は、報復関税合戦となり世界恐慌に繋がるのでないか?

関連リンク
[1]比較優位