計算コラム

(84) 江戸の改暦

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2016/12/20
西洋では春分の10日ずれにより、1600年余続いたユリウス暦がグレゴリオ暦へ1582年に改暦された。日本でも同様な改暦が江戸で起きた。平安時代に唐から導入された宣明暦は江戸時代まで800年余朝廷方に管理され使われ続けた。遣唐使以降は技術導入が途絶えユリウス暦に次ぐ長期暦となった。それにしても800年の天行ずれが2日のみとは宣明暦の暦精度は高かった。江戸幕府は幽閉した宣教師や蘭学から科学技術を学び育み、江戸庶民は和算を知的ゲームとして楽しみ、数学文化が花開いていた。その江戸で2日の暦ずれを修正し改暦を試みる学者が現れた。渋川晴海は元で使われた授時暦を日本時差に改良し日食を正確に的中させた。その偉業により暦業務を朝廷方から幕府天文方へ移すことに成功する。1685年の改暦となる貞享暦だ。朝廷の権威に江戸の計算文化が勝利した歴史事件である。元の授時暦はイスラムの科学技術が、江戸の和算文化は宣教師が持ち込んだ科学技術が下地となっている。科学技術は暦や天文を通じ世界を自由に駆け巡る。
関連リンク
[1] 和暦から西暦変換
[2] 円周率計算(和算学者の公式)